Monday,December 23, 2024
安易な改装は無意味です
現在の宿泊施設において必要なナレッジを対談形式で語っていく連載。連載第15回目は、ホテル改装デザインチームとして宿泊施設の改装に尽力されている馬渡伸之氏と、日本の宿泊施設における改装の問題点について対談しました。
- とりあえずきれいに改装しよう!これが敗因?
- 私はこれまでさまざまなタイプの宿泊施設のオーナーと接してきました。言うまでもなく、改装する本質的理由は売上の向上です。売上を伸ばすためには、まずターゲット設定が必須です。「みんなに好かれたい」、「ウチはお客様を選ばない」などと言う宿泊施設は、「誰の友にもなろうとする人間は、誰の友人でもない」状況に陥り、改装しても誰からも選好されず、売り上げも上がらないケースが近年多く見られます。
- 「ターゲット設定された改装」のイメージが湧かないのですが?
- 設定されたターゲットによって、客室の設備は変わるということです。例えば、数泊滞在のビジネスマン層がターゲットなら、実用に適した快適なデスクが必要ですし、スーツを吊る場所も必要です。備え付けのズボンプレッサーや衣類消臭剤、フィットネスクラブ設置などが喜ばれるかもしれません。しかしレジャー層がターゲットでしたら、それらはいずれも付加価値を訴求するアイテムではない可能性が高く、かといって双方のターゲットに喜ばれる設備を全て備えれば、限られたスペースは狭くかつ雑然としてしまい、結果として誰にも喜ばれない空間となってしまいます。
- 効果的な改装とは「デザインされた改装」を行うこと?
- デザインという言葉は、「ターゲットゲストを満足させるために設計をすること」が語源となっています。したがって優れたデザインとは、必ず設定されたターゲットに基づいています。コスト削減の観点から、宿泊施設サイドではデザイン料を支払うことを躊躇する傾向が見受けられます。しかし、それは「ターゲットゲストを満足させるために設計をすること」を放棄することと同義であり、それで改装に成功した事例は古今東西ありません。改装する際には、必ず「デザインのプロ」に任せることが結果的に得策だと言えるでしょう。