Monday,December 23, 2024
料理は、なるべく食べたくない時代へ
現在の宿泊施設において必要なナレッジを対談形式で語っていく連載。連載第6回目は、フードコーディネーターとして活躍されている山本容代氏に、宿泊業界とフードデザインの関係について対談しました。
- フードコーディネーターなんていらなくない?
- 売り手市場だった過去においては、製造すればモノは売れたため、プロダクトアウトが主流でした。料理も同様です。総料理長という権威が料理を作りさえすれば、食べ手はおいしいおいしいと言って食べるのが当たり前でした。イヤなら来るな。それは、ホテルが西洋文化の発信基地であり、旅館が日本文化の発信基地であり、宿泊施設が輝く場所であった良き時代のことでした。確かに、その時代はフードコーディネーターなど不要でした。
- フードコーディネーターは時代とともに必要となってきた?
- 時代が進むにつれ、街場において提供される料理水準が飛躍的に高まったうえにレストランの軒数も激増し、宿泊施設における文化の発信基地的な性格は薄れてきました。本格的な競争環境により到来した買い手市場においては、商品はマーケットインの考え方によって開発される必要があります。そこでマーケットの嗜好を料理に反映させる担務を持つ職種として、フードコーディネーターなる職種が誕生しました。
- つまり食べたくない人に食べさせようとする職業ということでしょうか?
- 商品のもつ魅力を最大限に引き出し、マーケティング的により力のある商品へ昇華させるという観点からは、そう言うこともできるかもしれません。日本における国民1人当たり摂取カロリーは、現在、終戦直後の水準まで再低下しています。食料全体の約20%強が捨てられていることを鑑みると、日本人は現在「料理をなるべく食べたくない」状態にあると言えるでしょう。その中で料理を提供するということは、生命維持のためではなく、純粋に楽しむためです。つまり、フードコーディネーターは、楽しいと思っていただけるような料理を作るサポートをすることに業務の主眼が置かれているのです。