Monday,December 23, 2024
ホスピタリティは、企業利益のため
現在の宿泊施設において必要なナレッジを対談形式で語っていく連載。連載第5回目は、ホスピタリティの推進に尽力されている船坂光弘氏に、宿泊業界とホスピタリティの必要性について対談しました。
- ホスピタリティはなぜ必要?
- 20世紀においては、消費者の満足は物を持たないことへの欠乏感から「物量を所有することそのものに価値を置いた満足」でしたが、21世紀においては、消費者の満足は物が溢れている中で「使用価値から得られる精神的質的な満足」に変わったと私は捉えています。
「サービス」とは、マニュアルに基づいて「ゲストを平準化して捉え個別とみなさない」ことが基本ですが、「ホスピタリティ」では「ゲストの個別満足を追求する」、すなわち「個々人が持つ異なった要求に可能な限り応え、精神的満足を追求する」ことであり、この精神的満足を追求する姿勢が21世紀指向の消費形態に適合するため注目が集まっているのです。
- ビジネスにおいてホスピタリティは手段なのですか?
- はい。ホスピタリティはあくまでも手段であり、目的は顧客主義の追求に基づくビジネスへの貢献です。
今やビジネスにおける売上追求、利益追求のために、ホスピタリティの追求は不可欠なものと考えています。決して従業員の自己満足のみを追求し、ビジネスに貢献しないお題目を薦めているわけではありません。
- どうしたら接客の際にホスピタリティを発現してもらえるようになる?
- まずは従業員が自身の持つホスピタリティを思う存分発現できるように、企業理念・行動指針・組織・人事評価制度など従業員の行動背景を整備しなくてはなりません。つまり「これがお客様のためになる」または「お客様が求めていることだ」と思った時に、そのアクションが実行できるように経営層が環境整備をする必要があります。日本的に言えば、制度設計を確立するとともに、集団同調圧力を調整する必要があります。
- ホスピタリティといえば某外資系ホテルチェーンと某国内系ホテルチェーンを連想しますが。
- おっしゃる通り、どちらのホテルチェーンも上述した基礎的段階は超えて、マーケティングに活用していくという積極的段階に到達していると思われます。ただし、某外資系ホテルチェーンがホスピタリティを付加価値として金銭化し収受する仕組み、およびホスピタリティにより追加収益へつながる仕組みを構築しているのに比べ、業態の差もありますが某国内系ホテルチェーンは主に稼働率が向上し、客室単価等の付加価値には直結していないように見受けられます。
- なるほどすべては仕組みということでしょうか?
- はい、まずは業態に対する適合性を的確に判定し、その後に目的を設定し、その目的を達成するための方法論を構築するというやりかたは、どんなときにも当てはまると考えています。ホスピタリティビジネスも基礎的段階においてはまず仕組みの構築ですが、これがなかなか一筋縄ではいかない…